2019年12月23日 小森谷浩志さん【「禅×経営学」かもめのジョナサン、禅を語る】

概要

小森谷浩志さん「禅×経営学」では、12月から数回に分けて伝説のベストセラー『かもめのジョナサン完全版』(五木寛之創訳)から、この寓話の底の底に潜む禅的思考を取り上げていきます。

 

原著発表当時のヒッピー文化とあいまって、管理社会の中で圧殺されようとしている人々は、脱出の夢をこの物語に託し、ジョナサンのように自由になろうと自身の生き方を見つめ直す大ブームの皮切りになった本ともいえます。

 

2014年、新たに最終章が加えられ、完全版として再び五木寛之氏によって日本語化された本書には、1974年のオリジナル版あとがきと、完全版へ向けた新しいあとがきの、2本の後書きが収録されています。五木氏自身が、あえて翻訳とはよばず「創訳」をしたと自称するわけが明かされる"あとがき"こそが、実は本篇のかもめのストーリーより読み応え満載なのです。

 

40年前のあとがきで五木氏は、この物語には「高い場所から人々に何かを呼びかけるような一種独特の雰囲気」があり、体質的に自分の肌には合わないと断じています。

 

「冒険と自由を求めているようでいて、逆に道徳と権威を重んずる感覚」がある。「偉大なるものへのあこがれ」が、「上から下へとひきつがれる形」でしか結局物語られていない。

 

そういった分析を織り交ぜながら、人間が「このような〈群れ〉を低く見る物語を愛する」理由は、「民衆の集団的な無意識や潜在的な願望」に根差しているのではないか、だとしたら「この物語のさし示すもの」と「大衆の求めるもの」が重なった先によこたわっているのは「怖ろしい予感」でしかないと、本書の評価へ一石を投じました。

 

戦争を体験した氏が呈した危惧は、昨今の選挙で「ポピュリズムの台頭」を目の当たりにしている私たちにも共感できるものです。

 

そして加えられた終章を、一転この物語が神秘化の否定を訴えているのだと五木氏は読みます。完全版のあとがきでは、なぜ親鸞がきびしく神秘化を否定したのか、偶像崇拝や人物崇拝がなぜ本質の形骸化を招くのか、法然やブッダを引き合いに出して言及します。

 

ただし「永遠の時空を超えたジョナサン」自身とも「ジョナサンの幻影」ともつかぬ存在が、自死まで思い詰めた1羽のカモメを救うに到って、氏は「神秘的に神秘化を否定する結末をむかえた」といささか注文をつけています。この結末に「不思議な感慨をおぼえた」と、手放しに称賛することを避けた氏の意図を読み解くことこそが、正に完全版読破ということになるのではないかと思う程です。

 

ジョナサンは内面の世界の追求を目的としていません。「よりよく飛ぶ」ことそのものの追求だけがジョナサンの目的です。第二章・第三章と、ジョナサンのエゴやこだわりが消え、おのずと内面の重要さに気づいていく辺りは「十牛図」、はたまたプラトンの真理思想に向かう導入になるかもしれません。

 

本を事前に読む必要も持参する必要もありません。どうぞお気軽にご参加下さい。

詳細

12月23日(月)18:30-21:00

自由が丘駅徒歩3分/サイマーカフェ

15席 

¥8.000(ペア割 ¥7.000)

¥6.000(リピーター)

お願い

着金をもってお申込完了となります。参加費の返金振替は原則行いませんのであらかじめご了承ください。

お江戸百年塾「禅×経営学」

塾頭 吉野真由美

小森谷浩志さんプロフィール

株式会社ENSOU 代表 ・博士(経営学)・神奈川大学経営学部国際経営学科講師・株式会社ジェイフィール コンサルタント

http://ensou.jp/

1988年ニッカウヰスキー株式会社入社、営業にてトップの業績を残した後、アサヒビール株式会社のコンサルティング会社の設立に参画、コンサルタント育成体制を構築。現在は“いのちが喜ぶ経営”をテーマに活動。自覚の方法論として東洋の智慧、特に禅の基本テキスト「十牛図」に着目。内省と対話を鍵にマネジメント·コミュニティを中核とした組織開発、個の可能性の開花にアプローチするワークショップを展開している。2010年から始めたファシリテーター養成講座は修了生が350名を越え、学習するコミュニティを継続中。カナダのモントリオールで行われたグローバルカンファレンスREFLECTIONS 2017では、世界20カ国の参加者に「禅とマネジメント」を発信、話題を呼んだ。趣味は瞑想と気功。禅と経営学、一見遠い存在の二つの探求を道楽にしている。

所属学会 日本経営診断学会、日本マネジメント学会、戦略研究学会他 。

株式会社ENSOU 代表 ・博士(経営学)・神奈川大学経営学部国際経営学科講師・株式会社ジェイフィール コンサルタント

http://ensou.jp/

1988年ニッカウヰスキー株式会社入社、営業にてトップの業績を残した後、アサヒビール株式会社のコンサルティング会社の設立に参画、コンサルタント育成体制を構築。現在は“いのちが喜ぶ経営”をテーマに活動。自覚の方法論として東洋の智慧、特に禅の基本テキスト「十牛図」に着目。内省と対話を鍵にマネジメント·コミュニティを中核とした組織開発、個の可能性の開花にアプローチするワークショップを展開している。2010年から始めたファシリテーター養成講座は修了生が350名を越え、学習するコミュニティを継続中。カナダのモントリオールで行われたグローバルカンファレンスREFLECTIONS 2017では、世界20カ国の参加者に「禅とマネジメント」を発信、話題を呼んだ。趣味は瞑想と気功。禅と経営学、一見遠い存在の二つの探求を道楽にしている。

所属学会 日本経営診断学会、日本マネジメント学会、戦略研究学会他 。

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